ポルくんは海が好きです。
魚も好き。
海の生き物も大好き。
沖縄に行けば、ずーっと海にいる。
でも実は今まで、
海の中を見ることができませんでした。
正確に言うと、覗きバケツなら見られる。
でも、シュノーケルは無理。
顔を水につけるのが嫌なのか、口で呼吸するのが嫌なのか、何が嫌なのか本人もうまく説明できない。
とにかく、
嫌なものは嫌。
そんな感じでした。

2年前、宮古島で海亀ツアーに参加した
2年前、宮古島に行った時。
せっかく沖縄に来たんだから、ポルくんにも海の中を見せてあげたい。
海亀だって見せてあげたい。
そう思って、海亀を見るシュノーケリングツアーに申し込みました。
もちろん、普通に参加できるとは思っていません。
事前に事情も説明して、
「もしかしたらできないかもしれません」
ということも伝えて参加しました。
そして当日。
やっぱりダメだった。
シュノーケルをつける。
嫌がる。
海に入る。
無理。
最終的には、
シュノーケル、投げ捨てる。
ですよね。
そうなる気はしてた。
結局ポルくんは、海の中を見るために用意してもらった覗きバケツを使いました。
それでも海亀は見られた。
だから、それでいい。
その時はそう思いました。

去年もシュノーケルは無理だった
そして去年。
少し大きくなったし、今年はいけるんじゃない?
と思って、またチャレンジ。
……無理でした。
やっぱりシュノーケルは嫌。
なので、
じゃあ、いいや。
無理にやらせても楽しくない。
沖縄の海は、来年もある。
覗きバケツでも魚は見える。
だから、その年もそれで終わりました。
そして今年。母、また余計なものを買う
そして今年。
私はまた考えました。
普通のシュノーケルじゃなかったらどうだろう。
そこで見つけたのが、
顔全体を覆うタイプのフルフェイスのシュノーケリングマスク。
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(ちなみにポルくんは大きめキッズなので私と同じS/Mサイズです)
これなら口にシュノーケルをくわえなくてもいい。
普通に呼吸できる。
もしかしたら、これならいけるんじゃない?
と思った。
でも当然、
本人が使う保証はない。
我が家ではよくあることです。
良かれと思って買う。
本人に見せる。
「いらない」
終了。
なので今回も、
「これなら絶対できるよ!」
とは言わない。
覗きバケツもちゃんと持っていきました。
ダメならバケツでいい。
逃げ道は残しておく。
頼む。成功してくれ
そして瀬底島の海。
いよいよフルフェイスマスクをつけて、顔を水につける時がきました。
本人より私の方が緊張していたと思う。
心の中では、
頼む……。
成功してくれ……!!
ここで水がドバーッと入って、
「もうやらない!!」
ってなったら終了です。
そしてポルくんが顔を水につけた。
……すぐ顔を上げた。
まずい。
失敗か!?
と思ったら、
「なんかちょっとズレてたのかなぁ」
と言いながら、自分でマスクを少し浮かせた。
中から結構な量の水が出てきた。
うわ。
入ってるじゃん。
するとポルくん、
「汗かいてるから目が染みるなぁ」
と言った。
私は、
「お〜ん。暑いもんね〜」
とだけ答えた。
海水だということには触れなかった。
絶対に触れない。
ここで、
「それ海水入ってるんだよ」
なんて言ったら、
ママがまた余計なものを買いやがって!!
となる可能性がある。
本人が汗だと思っているのなら、
それは汗です。
母、余計なことは言わない。
「バケツにする?」と何度も聞いた
それからも何度か水は入った。
そのたびに顔を上げて、自分で水を抜く。
私は何度も聞きました。
「バケツにするかい?」
「バケツでもいいんだよ?」
でもポルくんは、
「いや、これにする」
と言った。
お。
やるんだ。
そして何回か繰り返しているうちに、だんだんコツを掴んできた。
顔をつけている時間が長くなっていく。
そしてついに。
ポルくんが勢いよく顔を上げて言いました。
「ママ見て!黒い魚いるよ!大きいよ!」
あ。
見えたんだ。
海の中。
初めてちゃんと、自分の目で魚を見たんだ。
できたことより、魚の方が大事だった
私は、
「できたじゃん!」
とか、
「すごいじゃん!」
とか言いたくなったけど。
本人はそんなことより魚です。
「ママ!あっち!」
「魚いる!」
そしてすぐに役割分担まで決められました。
「僕が魚を見つけるから、ママはGoProで撮影して」

はい。
母、撮影係。
ついさっきまで、
水が入ったらどうしよう。
嫌になったらどうしよう。
投げ捨てたらどうしよう。
とハラハラしていたのに。
もう普通に魚を探してる。
子どもって、できるようになる時はこんなに突然なんだなと思いました。
魚にツンツンされる
そのあと、一匹の魚がポルくんのところに何度もやってきました。
ツン。
ツンツン。
何度も攻撃してくる。
私は、
大丈夫か?
怖がるか?
と思って見ていたんだけど、
本人はどうやら、
魚が遊んでくれていると思っている。
楽しそう。
そして海から上がる時。
ポルくんはその魚に向かって、
「ごめんね〜。もう帰るから〜。楽しかったよ〜!」
と言っていました。

たぶん魚は遊んでない。
でも、まあいい。
ポルくんは楽しかったらしい。
2年前にできなかったことが、今年できた
2年前はシュノーケルを投げ捨てた。
去年もできなかった。
今年も、最初からできたわけじゃない。
水は入ったし、
目も染みたし、
何回もやり直した。
でも今年は、
「バケツにする?」
と聞いても、
「いや、これにする」
と言った。
それが一番うれしかったかもしれません。
できたことももちろんうれしい。
でも、
自分で「もう一回やってみる」を選べたこと。
それがすごくうれしかった。
「できない」は、今年もできないとは限らない
発達に特性がある子といると、
「これ無理だな」
と思うことがたくさんあります。
周りの子が普通にやっていることができなかったり。
せっかく予約したのに参加できなかったり。
買ったものを一度も使ってくれなかったり。
お金払ったんですけど!!
と思うこともある。
でも最近、
今年できないなら、今年はやらなくてもいいのか。
と思うようになりました。
来年できるかもしれない。
再来年かもしれない。
もしかしたら、ずっとやらないかもしれない。
それでもいい。
でも本人がちょっとでも「やってみようかな」と思った時に、
選べるものがひとつ増えていたらいい。
今回はたまたま、それがフルフェイスマスクだったんだと思います。
普通のシュノーケルは無理だった。
だから違う方法を試した。
それでも無理だった時のために、覗きバケツも持っていった。
どっちでもいい。
そのくらいでちょうど良かったのかもしれません。
そして一度海の中が見えてしまえば、
もうマスクのことなんてどうでもいい。
そこには、
図鑑でしか見たことのなかった生き物が、
本当にいたから。
このあとポルくんは、
あのウミウシにも出会います。

図鑑の中にいたはずのウミウシが、
本当に沖縄の海の中を歩いていました。
あの日、
「いや、これにする」
ってもう一度マスクをつけたから見られた世界。
2年前にシュノーケルを投げ捨てたあの子が、
今年は魚に、
「楽しかったよ〜!」
と言って海から帰ってきました。
子どもの「できない」って、
案外、賞味期限があるのかもしれません。
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